digital 千里眼 @abp_jp

アナログな日常とデジタルの接点

平和ボケに効く『冬の兵士―イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実』

ちょっと高い(2000円弱)ので図書館などで借りて読むのが吉

イラク帰還兵が反戦の立場から述べた証言集

Wikileaks も結構だが、たまには自分と異なる経験を持つ人の話に耳を傾けるのもいい
この本には増え続ける「帰還兵の自殺」問題について理解する鍵が記されている
多くの証言者が20代の若者で、除隊後に軍から進学の学費援助を見込んていたところに問題の根深さを感じる。彼らにお金があればイラクに行かなかったろうし、徴兵制であれば息子の身の安全を案じた政治家が撤退を早めたことだろう
アブグレイブの衝撃的な写真を見たことがある人は多いかもしれないが、この本の中には個人所有のもっと衝撃的な写真が含まれる。そして写真の中の彼ら(もしくはその一部)はもう動くことはない

http://ecx.images-amazon.com/images/I/41QcPYSL8XL._SL500_AA300_.jpg

書名 冬の兵士―イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実
単行本 305ページ
出版社 岩波書店(2009/8/19)
ISBN-10 4000246518
ISBN-13 978-4000246514
発売日 2009/8/19

(アマゾンより)

以下は粗いサマリー

敢えて読むべき所を絞るとしたら、第一章、第二章、第五章、第六章を勧める

  • メディアでは報道されない、一兵士としての戦場体験集
  • 証言はテーマ別に七つに章分けされている
    1. 交戦規則
    2. 人種差別と非人間化
    3. 民間人の証言ーイラクの犠牲
    4. 分断し、統治せよージェンダーセクシュアリティ
    5. 帰還兵医療の危機と祖国における戦争の犠牲
    6. 企業による略奪と米軍の崩壊
    7. GIレジスタンスの将来
1.交戦規則
  • 「交戦規則」は兵士がどう戦うべきかを記したルールブックのようなもので明文化もされている。敵味方の識別はもとより敵対意志・敵対行動の確認。そして民間人・病院・学校・宗教施設への攻撃禁止が明記されている...のだが、証言によると戦況により変更され運用はいい加減だったようだ(このため民間人の死傷者が増えた)
  • うっかり市民を撃ち殺してしまったときの為の「捨て置き武器(AK-47)」や「捨て置きシャベル」(複数の証言に登場)
2.人種差別と非人間化
  • 戦闘という殺人行為に伴う精神的なプレッシャーを軽くする為の精神的な強化訓練が兵士の差別的な認識と問題行動の原因となっている
  • 捕らえた人を「被収容者」と呼ぶことで戦争捕虜の扱いを定めたジュネーブ条約を避ける(詭弁)
  • 「ハジ」という蔑称(本来の意味:メッカ巡礼を成し遂げた人)
  • イラクでは兵士が市民にとってのテロリスト
3.民間人の証言ーイラクの犠牲
4.分断し、統治せよージェンダーセクシュアリティ
5.帰還兵医療の危機と祖国における戦争の犠牲
  • 自殺する帰還兵の方が戦死した兵士より多い
  • 退役軍人省のお粗末な仕事(法律を持ち出しても最短で30日待ちの医療サポート)
  • 薬物療法を勧められるも薬の副作用に「自殺思考」。渋られつつ心理療法を受けに行くと、そこには同じ問題を抱えたベトナム帰還兵がいた
  • 息子を失った家族の証言
6.企業による略奪と米軍の崩壊
  • (徴兵制でない為)除隊延期制度「ストップロス」によりPTSDが層を成して積み重なる
  • 装備不足
  • 民間軍事会社との心理的な温度差
7.GIレジスタンスの将来
  • IVAW(Iraq Veterans Against the War)との出会い